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送配電設備の高経年化対策について
Ⅰ 高経年化対策の長期的な方針と取り組み
1.高経年化設備増加の背景
高度経済成長期の電力需要の伸びに合せて建設してきた大量の送配電設備は、経年による老朽化が進み、更新を必要とする時期を迎えています。
2000年頃までは、電力需要の伸びに対応するため、設備の新設や増設(大容量や太線への取替)を行うことで、古い設備が新しい設備に置き換わり、新しい設備が増加していました。
しかしながら、人口減少や省エネの進展などによる電力需要の減少に伴い、増設工事に伴う設備更新の機会が減少し、その後は、既存設備を寿命まで使用できるようメンテナンスに取り組んでいます。
今後、高経年化した設備が増加していく中、電力の安定供給を確保するためには、メンテンスを確実に行いつつ、設備更新による高経年化対策を本格的に進める必要があります。
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(参考)当社が保有する送配電設備
当社は、北陸エリアに大量の送配電設備を保有しています。
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2.長期的な高経年化対策の必要性
設備の施設年分布に従って更新を行うと、高度経済成長期に建設した設備数の「山」により、 ⓐ急激な工事量の増加により施工力の対応は困難となり、取替費用の増大も想定されます。
そのため、ⓑ状態の悪い設備の計画的な更新、およびⓑ設備状態を見極めた延伸等により、©工事量を平準化し、長期的な観点で適切な工事量を着実かつ継続して実施することにより、安定供給維持と費用抑制の両立を図っていきます。
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3.高経年化対策の長期的な取組み
高経年化対策を着実に実施していくためには、長期的な観点で適切な工事量レベルを見定める必要があります。
長期的な工事量レベルは、総設備量÷更新経年目安※から算出していますが、工事量が多ければ、費用や施工力が多く必要になることから、更新経年目安を延ばす、あるいは設備量を減らす取組みが重要になります。
一方で、適切な工事量を着実に実施していくために、持続可能な施工力の確保が必要と考えています。
※設備の劣化進行の個体差を踏まえた平均的な更新時期
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更新時期の見極め
設備劣化に関する技術的な知見を蓄積し、最適な更新時期(更新経年目安)を見極めることによって、工事量の平準化や、工事量の低減に取り組んでいます。
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保全による延命化
巡視点検により設備状態を把握し、状態に応じて適切に保全することにより、劣化の進行を遅らせ、最大限に延命化しています。
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長寿命品の導入
高耐食性の設備を導入し、設備更新や保守の周期延伸を図っています。
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設備量の削減
設備の更新を行う際は、需要動向等を踏まえ、設備のスリム化や最適化を図り、設備量の削減に取り組んでいます。
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調達の工夫
2019年3月に「調達改革ロードマップ」を定め、全電力(一般送配電事業者)との設備仕様の統一および共同調達をはじめ、様々な調達の工夫を通じて、更なるコスト低減を進めています。
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Eリーグ北陸 -施工力の維持・向上-
全国的な工事従事者の減少を受けて、当社は2015年7⽉1日に北陸の送配電工事会社と「Eリーグ北陸」という企業グループを⽴ち上げ、インターンシップや就職説明会の場で、パンフレットや映像等を活用し、工事従事者の確保・定着に向けた活動を⾏っています。
上記の取組みにより、発⾜前と⽐較して工事従事者数は1割程度増加しています。
最近の取組みとしては、Twitterの活用、工業⾼校向け副教材の提供、工事会社の若⼿社員にスポットを当てたPRムービーや鉄塔カードの制作などにより送配電工事業の認知度の向上を図りつつ、「社会貢献」や「やりがい」等の魅力を発信し、工事従事者数を維持・向上していきます。
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(参考)作業安全の取組み
従業員や施工会社の労働災害の防止に向けて、研修・訓練による安全意識向上や、施工会社と一体となった安全ルール策定により、安全を最優先する取組みを推進しています。
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施工能率の向上
ロボットやドローンを活用することにより、施工能率の向上を図っています。
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設計・施工の効率化
設備更新の増加に対応するため、メンテナンスにより延命化しながら、複数設備の更新時期を合わせて取替えることにより、設計・施工の効率化を図っています。
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4.高経年化対策の不断の改善
高経年化対策は、長期的に持続可能であることが重要であり、外部環境の変化にも柔軟に対応しつつ、託送料金を最大限抑制するため、PDCAを展開して継続的な改善に取り組んでいきます。
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Ⅱ 長期的な方針を踏まえた更新計画
1.長期方針を踏まえた更新計画の策定方法
当社の長期的な方針には、高経年化設備更新ガイドライン※の考え方を取り込んでいます。
長期方針(長期更新水準)を踏まえ、工事量、投資額を最適化しつつ、施工力の対応可否も確認し、更新計画を策定しています。
また、安定供給の指標として、高経年GLに定められたリスク量を現状維持できるよう更新対象設備を選定しています。
※2021年12月に電力広域的運営推進機関が策定・公表(以下、高経年GLという)
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(参考)高経年化設備更新の目指すべき方向性
これまでは、故障後に対応する事後保全(BM)や設備の施設年数に基づく定期保全(TBM)から、設備の状態に基づく状態監視保全(CBM)へ移行し、社内外の実績や知見を踏まえて個別に設備更新の必要性を判断してきました。
今後は、大量の高経年化設備に対して、設備状態を数値化(リスク量算定)することにより、適切かつ合理的に設備更新を判断するリスクベースメンテナンス(RBM)へ高度化していきます。
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2.代表的な設備の更新計画
鉄塔
巡視点検により錆の状態を把握し、塗装または部材交換を行うことで最大限延命化しています。
高経年化設備のなかでも、公衆安全の観点から電線地上高の低い鉄塔や、鉄塔強度が低い旧規格の鉄塔、メーカー製造中止により電線補修ができない鉄塔を優先的に建替しています。
長期的には、60基/年程度の建替を見込んでおり、季節間の工事量を平準化して、施工力を最大限活用しながら、計画の確実な遂行を図っています。
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(参考)公衆安全の確保
送配電設備の周辺環境の変化に伴い、電線の地上高さが十分に確保できなくなった設備は更新を行い、公衆安全を確保(電線との接触防止)しています。
また、台風などの自然災害時に倒木や飛来物が原因で、電柱・電線が支障となり交通網に影響を与える恐れがあるため、無電柱化に取り組んでいます。
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送電線
更新設備の優先順位付けは、高経年GLの寿命評価式をベースにしつつ、当社の撤去電線のサンプル試験結果により、施設環境(湿度・塩分量)に応じて劣化評価の補正を行い、更新時期を最適化しています。
なお、撤去電線サンプルは継続的に収集し、評価の精緻化を図っています。
長期的には、80~90km/年程度の電線張替を見込んでおり、鉄塔建替との同時実施により効率化を図りつつ、施設年度別の設備量にバラツキがあるため、工事量の平準化を考慮して計画を策定しています。
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変圧器
劣化の進展に伴い、応急修理(漏油補修)や抜本的な対策(パッキン取替、付属部品取替)を実施して延命化しています。更新計画は、漏油等の劣化進展度合いや、寿命決定要因となる絶縁紙の劣化診断結果等を踏まえ、優先順位をつけて策定しています。
最近の取組みとしては、変圧器に流れる潮流の大きさに応じて、変圧器の寿命に影響を及ぼす絶縁紙の劣化をシミュレーションすることにより、更新時期を10~20年延長しています。
長期的には、9台/年程度の更新を見込んでおり、平準化した計画を着実に遂行していきます。
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(参考)水害対策 -設備更新に合わせた供給信頼度の向上-
自然災害の多頻度化・激甚化を受けて、設備更新に合わせた変電所の水害対策を実施し、供給信頼度を向上しています。
洪水ハザードマップにより水害の恐れのある変電所については、短期的対策として、建物への止水板設置、貫通部止水処理等を実施し、中長期対策として、設備更新に合わせて建物フロアレベル・開閉装置等の嵩上げを実施しています。
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コンクリート柱
コンクリート柱は、内部鉄筋の腐食によりコンクリート柱の強度が低下するため、コンクリートのひび割れ等の外観の劣化状況と、内部の劣化想定を基に優先順位を付けて、更新計画を策定しています。
最近の取組みとしては、巡視点検における判定基準となる「サンプル写真集」の改善や、「コンクリート柱内部の劣化進行速度の研究を行い、更新時期の精緻化を図っています。
長期的には、5,900本/年程度の建替を見込んでおり、将来の工事量が増加傾向にあることから、更新経年目安の更なる延伸、施工力の維持・向上に向けた取組みを行っています。
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(参考)樹木倒壊対策 -設備更新に合わせた供給信頼度の向上-
コンクリート柱の更新に合わせて、樹木倒壊により停電が発生する可能性が高い区間については、樹木区間を避けて別ルートから供給する対策や地中化による対策を実施し、供給信頼度を向上しています。
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高圧電線
高経年化設備のなかでも、公衆安全の観点から故障実績を踏まえ、旧型電線(旧撚り線タイプ等)を優先的に更新しています。
長期的には、1,500km/年程度の電線張替を見込んでおり、コンクリート柱建替との同時実施により効率化を図りつつ、施設年度別の設備量にバラツキがあるため、工事量の平準化を考慮して計画を策定しています。
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その他の設備
鉄塔やコンクリート柱等以外では、送電ケーブル、遮断器、高圧ケーブル、柱上変圧器等の設備についても高経年化対策が必要であり、長期的な観点で適切な工事量レベルを見定めて計画しています。
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